研究概要 |
脂肪塞栓症候群に於る肺障害の発生機序に関し、アラキドン酸カスケードが関与している事を報告してきた。今回、当教室に於る研究結果を基にアラキドン酸及びその代謝物質を測定し、一般的に本症の治療薬として推奨されている薬物の有用性を検討した 〈結果〉各種薬剤に於る肺組織抽出液のアラキドン酸代謝物質の動態 1)アスピリンでは、トロンボキサンB_2,プロスタグランジンE_2が非投与群に比べ有意に低下していた。2)ベタメタゾンでは、トロンボキサンB_2とプロスタグランジンE_2が有意に低下していた。3)アプロチニンでは6-ケトープロスタグランジンF_<1d>,トロンボキサンB_2、プロスタグランジンE_2が有意に低下していた。4)ヘパリンではトロンボキサンB_2、プロスタグランジンE_2が有意に低下していた。 各種薬剤に於る肺胞洗浄液中のアラキドン酸代謝物質の動態 1)アスピリンでは、ホスホリパーゼA_2、6-ケトープロスタグランジンF_<1d>、トロンボキサンB_2、プロスタグランジンE_2、リン脂質が非投与群に比べ有意に低下していた。2)ベタメタゾンでは、ホスホリパーゼA_2、6-ケトープロスタグランジンF_<1d>、プロスタグラソジンE_2が有意に低下していた。4)ヘパリンでは、ホスホソパーゼA_2、アラキドン酸、6-ケトープロスタグランジンF_<1d>、トロンボキサンB_2、プロスタグランジンE_2リン脂質が有意に低下していた。 組織学的検討 アスピリン、ベタメタゾンでは肺毛細血管内の脂肪滴は消失しており水腫所見も認めなかった。アプロチニン、ヘパリンでは毛細血管内に脂肪滴の残存がみられ非投与群との明らかな差異は認められなかった。
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