慢性関節リウマチの関節破壊の機序を解明する目的で、多核白血球と軟骨細胞との混合培養系を用い、多核白血球による軟骨細胞の障害性を検討した。まず軟骨細胞を^<51>Crでラベルした後、活性化した多核白血球を添加し軟骨細胞より放出された^<51>Crの量を測定することにより細胞障害性を判定した。その結果、活性化された多核白血球の添加により軟骨細胞からの^<51>Crの放出は増加した。この細胞障害性は、培養液中にカタラーを添加することにより阻害する事ができた。これらのことより活性化多核白血球による軟骨細胞の障害は、多核白血球によって生成される過酸化水素の作用を介して生じていることが明らかになった。 近年、過酸化脂質が細胞障害性に作用することが明らかにされ注目を浴びている。多核白血球による軟骨細胞の障害機構として過酸化水素による軟骨細胞膜脂質の酸化作用が考えられる。そこで軟骨細胞を過酸化水素の存在下で培養し、質量分析装置により酸化脂質の解析を行なった。その結果、細胞膜のコレステロールエポキサイドの量が増加することが明かとなった。さらに精製したコレステロールエポキサイドを培養下の軟骨細胞に添加すると、濃度依存性に細胞障害性が促進された。これらの事実より、活性化多核白血球の産生する過酸化水素による軟骨細胞の障害の機構として、過酸化水素による軟骨細胞膜コレステロールの酸化が中心的な役割を担っている可能性が大きく、この過程が炎症性関節破壊に重要であることが明らかにできた。
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