平成4年4月より受精9日鶏卵の漿尿膜(CA膜)上での骨の器官培養を行ない20ガウスおよび40ガウス交流磁場の影響を観察した。培養に用いた骨は受精鶏卵18日胎仔より取り出した左右大腿骨の骨幹部で、それに種々の骨損傷(骨折、V字型骨欠損、O型骨欠損、鋼線刺入および抜去など)を加え、CA膜上で10日間の培養を行ない、各々の骨損傷形態における修復状態を、磁場を照射したものとしないものとの間でヘマトキシリン-エオシン染色により組織学的に比較した。この実験系においては、骨損傷の形態を種々変えてみたが、培養条件を一定に保ったにもかかわらず、骨修復程度は卵間で差があり、組織学的観察のみでは磁場による修復の差を明確にすることは現在の段階では出来ていない。今後は、上記骨損傷の型を一つに絞り、培養条件を更に厳密に一定化して、培養の数を殖やすことにより、修復仮骨の均一化をはかり、他の染色法も併用して、磁場の損傷骨修復に及ぼす影響を検討していく予定である。それでも尚均一的な仮骨形成が期待出来ない際には、CA膜上での培養は止め、培養液を用いた骨または骨芽細胞培養法を用いて磁場の影響を検討する予定である。また、パルス磁場装置も試作中であり、その骨修復は及ぼす影響も検討する。 今回は、14日胎仔の大腿骨全体をCA膜上で培養することにより長径および横径共に成長することが分かったので、正常胎仔大腿骨との発育の差を肉眼的、組織学的に比較し、更に磁場の培養大腿骨成長に及ぼす影響を観察した。その結果を今秋の学会で発表予定である。 また、交流磁場が胎仔発育に及ぼす影響を調べたが20ガウス、40ガウス共に胎仔発育がやや良好である傾向が見られたので、統計的処理を行ない、内蔵や長管骨に及ぼす影響も組織学的に検討し「交流磁場が受精鶏卵の発育に及ぼす影響」と題し、今秋の磁気と生体研究会に発表予定である。
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