平成4年度においては、各種ストレス反応に及ぼすβ遮断薬の影響について研究した。イヌを対象に、ハロタン麻酔(1%)およびフェンタニル麻酔(初回25μg/Kg、以後12.5μg/Kg/時を持続投与)の下に、対照群とβ遮断群(血漿プロプラノロール濃度50〜100ng/ml)を作成し、炭酸ガス蓄積(PaC0_2=75mmHg、100mmHg)、低酸素(PaO_2=60mmHg、40mmHg)および出血(平均動脈圧=60mmHg、40mmHg)のストレスを負荷し、循環系ならびに代謝系の変化を経時的に測定した。 1.炭酸ガス蓄積によって、循環系では心拍数増加、血圧上昇、心拍出量増加などの、代謝系では血糖上昇、血漿K上昇などの著しい変化がおこる。これはストレスホルモンであるカテコラミンの分泌増加によるが、フェンタニル麻酔の方がハロタン麻酔よりも変化が大である。β遮断はこの変化を抑制するが、フェンタニル麻酔下での抑制の方が軽度である。しかし、血漿K上昇に関してはβ遮断の方が著しく、その程度はハロタン麻酔でより著明である。 2.低酸素負荷によっても、上記と同様な変化がみられ、やはりフェンタニル麻酔の方がハロタン麻酔よりも大きな変化を認める。β遮断による抑制も炭酸ガス蓄積の場合と同様にハロタン麻酔でより強く認められる。 3.出血負荷に関してもほぼ同様な変化を認める。しかし、ハロタン麻酔とフェンタニル麻酔との間、および対照群とβ遮断群の間には脱血量に差があり、これが結果に大きな影響を与えていると考えられるため、なお検討が必要である。
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