研究概要 |
平成5年度の研究においては,ラットの摘出肺灌流実験モデルが確立し,低酸素性肺血管収縮反応(Hypoxic pulmonary vasoconstriction,HPVC)を容易にとらえることが可能となったことが最大の成果と考える.これによって吸入酸素濃度の変化とHPVCの強さの関係が正確に測定可能となるとともに,灌流液の分析からHPVCのmediator解明への道が開けたと考える.また,本モデルの確立の過程において,膠質液のみでの灌流ではすぐに肺水腫となり,膠質液に少量の血液を添加し,Hb1.0gという高度の血液希釈状態によってこれが防がれるという知見が得られ,毛細血管の透過性維持と血液成分の関連という新たな研究課題が見いだされた.以下に平成5年の研究実績を総括する. 1.ラットの気管支を摘出し,細胞を破砕しその抽出液を液体クロマトグラフィーで分析し,HPVCのmediatorの候補である5-HTが多量に存在することが確認された. 2.しかしながら,ラットの全肺のスライス標本および摘出気管支を低酸素クレブス液灌流実験では灌流液中の5-HTの上昇は認められなかった. 3.ラットの摘出肺灌流標本においても吸入気の酸素濃度の低下によって著明な肺血管抵抗の上昇を認めた.これによってHPVCが中枢神経の支配から独立した反応であることが証明された. 4.3の灌流標本におけるHPVCは,吸入麻酔薬セボフルレンによって抑制され,静脈麻酔薬ペントバルビタールでは抑制されなかった.
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