研究概要 |
肺気管支に存在する神経上皮複合体(Bronchopulmonary neuroepithelial body,NEB)は、細胞内顆粒中にアミンやペプチドを豊富に持った細胞群で、ヒトや動物の気道上皮に広く分布し、形態学的には頚動脈小体などのparaneuronとの類似性が指摘されている。免疫組織化学的な手法によって、NEBの細胞内顆粒が、5-HTなどの活性アミンやcalcitonin-gene-related peptide(CGRP)などのペプチドを含んでいることが証明されている。また、低酸素の吸入時等にNEBの脱顆粒が生じることが知られており、NEBが何らかのメカニズムで低酸素を感知しているとの説が有力である。われわれは、この脱顆粒が、低酸素性肺血管収縮反応(Hypoxic pulumonary vasoconstriction,HPV)を引き起こすと考え、また、NEBに最も多く含まれる、5-HTがそのmediatorと考え、ラットの分離肺潅流モデルにおいて、HPV機序の解明を試みた。 分離肺潅流モデルにおいて低酸素吸入によって生じるHPV反応は、5-HTの選択的なantagonistであるketanserinの投与によって完全に抑制された。また、ketanserinの投与を中止し、ketanserin freeの潅流液とした後にも、HPV反応の回復は認められなかった、。この実験結果から、5-HTがHPVのmediatorであることが強く示唆された。ketanserinは5-HTのcompetitive inhibiterであるとされているが、本実験で、投与中止後も作用の持続を認めたことにより、5-HT receptorとの強い結合が示された。
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