研究概要 |
胎児型、および成体型ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR_γおよびnAChRε)に対するベクロニウム(Vbr)の作用の差を検討した。 (方法) ウシのnAChRの各サブユニット(α,β,γ,δ,ε)に対するmRNAをα:β:γ:δ=2:1:1:1(胎児型)またはα:β:δ:ε=2:1:1:1(成体型)の割合で混合して、アフリカツメガエル卵母細胞に注入し、nAChR_γおよびnAChRεを発現させた。これらの卵母細胞をRinger液を灌流したBathに固定し、2電極膜電位固定法にて細胞内電位を-60mVに保持した状態で、ACh 1μM、10μm、100μM、1000μMを単独またはVbr 100nM、300nMと同時に灌流したときに受容体を流れる内向き電流を測定した。Vbrの抑制効果はAChとVbr 100nMまたは300nMを同時に灌流したときの電流量の相対値を、ACh単独のときを100として表し、胎児型と成体型の有意差の検討はVbr 100nMおよび300nMのそれぞれの場合について二元配置分散分析で行った。 (結果) ACh 1μM、10μM、100μM、1000μMに対する電流量の相対値はVbr 100nMの場合、胎児型では0.32±0.55、1.87±2.87、40.32±2.73、83.57±18.41成体型では0.00±0.00、0.24±0.59、26.87±9.40、60.08±16.18、Vbr300nMの場合、胎児型では0.00±0.00、0.60±0.89、4.01±5.49、69.73±18.58、成体型では0.00±0.00、0.00±0.00、0.63±0.98、63.56±6.40であり、Vbr 100nM、300nM灌流時の胎児型における電流量の相対値は成体型より有意に大きかった(P<0.01)。 (考察) Vbrの抑制効果は成体型より胎児型の方が小さい。これは、除神経において、骨格筋のnAChRのεサブユニットがγサブユニットに置き替わることにより、非脱分極性筋弛緩薬に対する感受性が小さくなることを示唆している。
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