研究概要 |
今年度はニホンザル12匹(4‐8kg・雄)を用いて、温水による表面加温法によって体温を上昇させた際の血液粘度変化の検討を行った。 [方法]ニホンザルにケタミンを筋注して就眠させた後、気管内捜管した。局麻下に大腿動静脈を血管切開し、5%ぶどう糖液を点滴静注し、ペントバルビタール及びモルヒネで麻酔し、ベクロニュウムで不動化し、体温を上昇させた。最高体温43℃で60分維持したのち、体温を下降させた。赤血球、Hb、Hct、血小板を全自動血球計数器(MEK‐7108)で測定し、血液の粘度(全血粘度)を円錐平板式のバイオレオライザーで2.4cmの48'コーンを用いて、ずり速度37.5,75,150,375sec^<-1>の4段階で測定した。測定温度すなわち恒温槽の温度は体温と同じくして測定した。 [結果]収縮期血圧は41℃までは上昇するが、それ以上の体温では低下する傾向を示し、43℃を60分維持した時点では約1/2と有意の低下をみた。復温後にはやや回復するが有意に低かった。拡張期血異も同様であった。心拍数は体温上昇及び43℃の体温維持中常に上昇し続け、復温と共にやや低下するものの加温前値より有意に高かった。血液粘度はずり速度4種類では全て同じ傾向を示した。37.5sec^<-1>のずり速度で加温前値5.03cpが、42℃までは徐々に低下し4.8となり、43℃で上昇に転じ4.89、43℃60分維持した時点では5.48と加温前値より上昇し、復温後には更に上昇し、6.12と有意に高いくなった。この体温上昇の血球検査では赤血球、Hb、Hct共に同じ傾向を示し、加温前値より41℃まではほとんど変化がなく、42℃で有意に高くなり、43℃で以後60分維持した時点及び復温時で更に上昇し、血液が濃縮した。 [考案]サルは発汗がないため、人では発熱の際には大量の発汗を認める。この様な状態に於ては、血液は濃縮し、血液粘度が上昇し、血液の流動性は低下し、臓器障害をもたらす危険性が示唆される結果が出た。
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