熱中症時の病態生理変化について検討を加えてきたが、体温を上昇させる際の変化について検討をしたのがほとんどであった。今回は体温を一定にした上で経静脈的にブドウ糖を負荷し、耐糖能を検討した。 【実験方法】ニホンザル8頭(体重4.5〜9.5kg、♂6、♀2)をケタミン30〜40mg/kgを筋注し、就眠させた後、気管内挿管し、空気呼吸下とした。アイカ動物用人工呼吸器R-60に装着、1回換気量を10〜15ml/kgとし、換気回数は呼気終末炭酸ガス濃度を約30mmHgに保つように調節した大腿動・静脈を1%リドカイン局麻下に血管切開し、点滴ルートと観血的動脈圧測定及び採血用とした。輸液は乳酸加リンゲル液を10ml/kg/hrで点滴し、初回量としてペントバルビツレイト5mg/kg、フェンタニール5ug/kgを投与後、同量を実験終了まで時間当たり投与した。また、パンクロニュームで不働化した。体温上昇はニホンザルをビニールシートで被い、温水浴に浸漬し、体温より3〜5℃高い水温で上昇させ、目的体温(38、40、42℃)±0.2℃で2時間維持した。目的体温に達した後、20%ブドウ糖液0.5g/kgを2分間かけて静注した。投与前、投与後1、3、5、10、20、30、40、50、60、90の11点で採血した。採血後直ちにNova社製 Statprofile6で電解質、血糖値Radiometer社製ABL2で血液ガスを、また、遠心分離した後、冷凍保存し、インスリン、カテコールアミンを測定した。 【結果】循環系の変化は体温が高いほど、血圧が高く、頻脈を呈した。動脈血血液ガスでは実験中、低酸素状態に陥ることはなかった。血糖値は38、40、42と体温が高いほど血糖値は高く、インスリン分泌は38℃より、40℃の方が少なく、42℃では糖負荷後20分後より低下することが少なく、持続的に高い値を示した。この際のカテコールアミン分泌は38、40℃では少なかったが、42℃では高い値を示した。 【考察】糖を負荷することにより、42℃の高体温ではインスリンの分泌が長時間維持され、これにはカテコールアミンが関与していることが示唆された。
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