熱中症の病態生理を検討する目的でニホンザルや雑種成犬を用いて42°C以上の高体温状態をケタミン・ペントバルビタール及びモルヒネ・フェンタニールで静脈麻酔した動物をビニールシートで被い、温水浴に浸漬する方法を用いて作成した。 (1)ニホンザルでは体温を43°Cまで上昇させ60分維持した際の血液粘度をずり速度を3種類変え測定した。その結果、高体温にする過程では変化を認めず、体温を復温した後に有意の増加を認め、血液ヘマトクロットとの相関を認めた。 (2)高体温中の耐糖能を検討した。体温を38、40、42°Cに維持し、ブドウ糖0.5g/kgを経静脈的に負荷し、血糖値・インスリンを投与後90分にわたり測定した。高体温になるほど耐糖能は低下し、血中インスリンは38°Cより40°Cでは低下するものの、42°Cでは逆に高くなり、カテコールアミンが上昇したことにより、ストレスも影響が高いことが示唆された。 (3)雑種成犬では、同じく体温を43°C60分維持して脳血流・脳圧を検討した。心係数は43°Cまでは有意に上昇し、60分維持した際に低下を示した。内頸動脈血流は心係数と同様の変化を示したが、脳皮質・髄質血流には有意の変化は認められず、脳圧は42、43°Cで有意に増加した。この結果、脳は強く保護されていることが示唆された。 (4)末梢循環、筋肉血流、筋代謝を検討した結果、心拍出量が有意に増加するのに反して、皮膚や筋肉の血流は増加しなかった。高体温中に心拍出量は著しく増加するが、その血流が体内のどの部分に分布されるか、更なる検討が必要であると思われる。
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