研究概要 |
現在臨床使用されている麻薬,麻薬拮抗性鎮痛薬および非ステロイド性消炎鎮痛薬の妊娠・分娩経過中における内因性鎮痛との相加または相乗効果の可能性を探るために,まずこれらの各種鎮痛薬の体性痛および内臓痛に対する鎮痛効果を比較検討した。SD系雄ラット50匹(250-350g)を用い,腹腔内投与薬剤の種類によりモルヒネ4mg/kg(M群),ブプレノルフィン0.03mg/kg(B群),ペンタゾシン2mg/kg(P群),アスピリン100mg/kg(A群),フルルビフロフェン30mg/kg(F群)の5群(各群n=10)に分けた。各薬剤投与前後の体性および内蔵性侵害刺激に対する疼痛域値の推移を5分間隔で薬剤投与後45分まで経時的に測定した。体性侵害刺激としてはTail-flick test(TF)を用い,熱刺激に対する逃避潜時を測定した(輻射熱刺激装置,夏目製作所KN205E)。内臓性侵害刺激としてColorec-tal-distension(CD)を用いた(疼痛アナライザーメーター,ユニコム社製TK-201)。各薬剤投与前のTF潜時およびCD域値の平均はそれぞれ4.5秒,22mmHg前後で5群間に差を認めなかった。薬剤投与後のTF潜時はA,F群で有意な変化を示さなかったが,M,B,P群では投与10-30分には6-7秒と著明な延長が認められた。一方,CD値は全群で域値上昇を認め,M,BおよびP群では投与後10-30分には30-40mmHg、A、F群では35-45,mHgであった。以上の結果より,麻薬および麻薬拮抗性鎮痛薬と非ステロイド性消炎鎮痛薬の体性痛および内臓痛に対する鎮痛効果は一様でないことが判明した。つまり,非ステロイド性消炎鎮痛薬の体性および内臓性侵害刺激に対する鎮痛効果には解離が認められた。現在,このことを基礎にラットの妊娠経過中における内因性鎮痛,特に内臓痛に対する各種薬剤の相乗または相加的作用の有無について検索中である。
|