研究概要 |
ハロセン(1%)で麻酔された猫を脳・脊髄固定装置を用いて右側臥位に固定して、第7胸椎椎弓切除により直視下に硬膜外腔にカテーテルを留置した。次に左第2肋間開胸および第2、第3肋骨を切除して、星状神経節より分かれた腹外側心臓神経または腹内側心臓神経より交感神経心臓枝の活動を測定した。右外頚静脈より4極カテーテル電極を右房内へ挿入し、心房心電図の記録と心房ペーシングに供した。左大腿静脈より4極カテーテル電極を三尖弁付近まで挿入し、His束心電図を導出した。対照値の測定および実験系の安定性を確認するため硬膜外カテーテルより生食0.2ml/kgを注入し、心房心電図、His束心電図、交感神経心臓枝活動を8チャンネルポリグラフ上に描出すると共に、8チャンネルサーマルアレイレコーダに経時的に記録し、硬膜外注入前、注入後10,20,30分に3チャンネル電気刺激装置を用いて、300msecの基本ペーシング下にさまざまな連結期の心房期外刺激を与えることにより(atrial scanning method)、房室結節内興奮伝導時間(A-H)、房室結節有効不応期(ERP-AVN)、房室結節機能的不応期(FRP-AVN)等の諸量を測定した。次に、1%リドカイン溶液を0.2ml/kg(2mg/kg)硬膜外カテーテルより注入し、0,10,20,30分に対照時と同様の測定を行うとともに動脈血採血を行い血漿リドカイン濃度の測定を蛍光偏光免疫法により測定した。硬膜外生食投与では測定諸量に経時変化なく、実験系の安定性が確認された。リドカイン(1%、0.2ml/kg)投与で平均動脈圧、心拍数は有意に減少し、心臓交感神経活動はほぼノイズレベルまで抑制された。FRP-AVN、ERP-AVN、A-Hはそれぞれ15-20%、20%、50%延長した。血漿リドカイン濃度は2-3μg/mlの上昇にとどまり、ハロセン麻酔中の硬膜外リドカイン投与に伴う房室伝導抑制は心臓交感神経遮断が主要原因であると考えられた。
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