静脈麻酔薬作用機序解明のため、麻酔薬による組織の水構造変化を^1H-NMRの縦緩和時間(T_1)、生体高分子より水への分子間交差緩和時間(T_<IS>)を用いて研究した。生体試料の^1H-NMR測定において、挿入する生体試料を含むガラス細管(一端盲端)を5mmφNMR試料管の中心に挿入すること及びロック用溶媒の種類が重要である。本学・総医研・分子生理学研究部門と共同研究で、次のA、B、C法を考察し、ラット肝組織、大脳などを用い基礎的検討を加えた。(A)両端開の内径1.1mmのNMR用ガラス細管を、例えば回しながら肝臓にさし、肝組織を一端に入れた後、プラスチック・ペーストで両端を密閉し、さらに肝組織のある側のペーストをアロン・アルファでカバーし、ロック用D_2Oを入れた5mmφNMR試料管のほぼ中心にプラスチック・スペーサーを用い挿入した。(B)A法に更に改良を加え、両端開の75μ1ミクロピペットを生体組織にさし、試料を入れた後、一端盲端の内径1.1mmのNMR用ガラス細管にいれ、次に開端をプラスチック・ペーストで密閉し、ロック用ジメチルスルフオキサイド-d_6をいれた5mmφNMR試料管にA法に準じて挿入した。(C)B法で説明した方法により作成した内径1.1mmのNMR用ガラス細管を、内径3.2mm、外径3.98mmの特殊NMR試料管に入れ、これをロック用ジメチルスルフオキサイド-d_6を少量入れた5mmφNMR試料管に挿入した。上述のA、B、C法により作成した生体試料について、Brucker社AM500型スペクトロメーターを用い、シム調節の難易、T_1、T_<IS>の再現性などについて比較検討した。その結果、NMR装置のシム調節がC法では大変容易で、正確にT_1、T_<IS>を測定することが可能となった。
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