研究概要 |
【目的と方法】帯状疱疹は細胞性免疫が低下している患者で重篤になりやすく,急性期帯状疱疹痛も激しいことが多いので,細胞性免疫能の指標として末梢血のTリンパ球のサブセット(CD3,CD4,CD8)を62名の明かな基礎疾患を有していない帯状疱疹患者において経時的に測定し,対照群として水痘の既往があり,帯状疱疹を発症したことがない同年代の健康成人との比較を行った。さらに,Tリンパ球のサブセットと急性期帯状疱疹痛の治療に対して行った神経ブロック療法との関係とについて解析を行った。 【結果】対照群に比べ帯状疱疹患者CD4リンパ球は帯状疱疹発症急性期に若干増加し,CD8リンパ球は著しく増加していた。 その結果CD4/CD8比は著しく低下していた。 CD3りんぱ球は対照群と帯状疱疹患者で明かな違いは認められなかった。 Tリンパ球サブセットの測定が3回以上測定できた49例におけるTリンパ球サブセットと急性期帯状疱疹痛に対する治療期間との解析では,CD3(r=0.72,P<10^<-8>),CD4(r=0.60,P<10^<-5>),ならびにCD4/CD8比(r=0.62,P<10^<-5>)が最高となった発症後の日数と治療期間とには有意の正の相関が認められ,年齢と治療期間との正の相関(r=1.43,P<0.01)よりも高い値を示していた。 【結論】基礎疾患を有していない患者においても帯状疱疹発症急性期の末梢血のTリンパ球サブセットの観察から,細胞性免疫の何らかの低下を示唆する所見があり,急性期帯状疱疹痛からの回復機転において細胞性免疫が重要な役割を果たしていることが示唆された。
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