研究概要 |
良好な特異性と親和性を持つ単クローン性抗18-ヒドロキシコーチゾル抗体の作製に成功し,これを用いるイムノアッセイを確立した.本法は,B/F分離に磁性微粒子を使用し,標識にはアクリジニウムエステルを用いるチューブ法化学発光イムノアッセイであり,直ちに自動分析への応用が可能である.本法の性能については,平成4年日本臨床化学会総会(小樽)において,シンポジウム"先天性代謝異常のマススクリーニング"のなかで発表した. 簡単に述べると,尿40μlを用いる場合の本法の定量可能範囲は尿中濃度にして10-1000μg/lである.正常者および二次性アルドステロン症患者と原発性アルドステロン症患者(副腎摘出前)の尿中18‐ヒドロキシコーチゾル濃度は200μg/lを境に分離できるので,本法は両者の鑑別に適した性能を有するといえる.本法は用手法で3時間と比較的迅速であるが,自動化により分析時間は更に短縮できる.用いた単クローン性抗体は,腹水を10000倍希釈して使用できることから,十分な抗体価を有する.特異性の面では,18‐ヒドロキシコーチゾン(11%)を除いて交差率はきわめて低く,また18‐ヒドロキシコーチゾンは尿中には非常に少ないので臨床使用上の問題は全くない.化学発光標識ステロイドも低温で数カ月の保存に安定である. 本法を全自動化学発光装置に組み込む作業を現在行っており,マススクリーニングへの応用は多少遅れる見込みである.我々は既に,ペルオキシダーゼ標識ステロイドを用いるEIAをES-600(ベーリンガー社)上で全自動化するのに成功しており,まずこのEIAにより小規模スクリーニングを検討する予定である.本研究に関する我々の業績は3種の国際雑誌に出版され,更に数本の英文論文の投稿を準備中である.
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