| 研究概要 |
膀胱を過伸展すると、膀胱上皮の膨化や脱落が最低一日継続して観察された。この事は、健常な上皮が失われるという感染防御機構の重大な破綻であり、露出した中間細胞に細菌が容易に付着し感染発症へと導かれると推察した。細菌を膀胱腔内に注入し12時間後の変化を観察すると、MS、MR各線毛保有細胞菌共に上皮に付着し、また多核白血球の遊走が見られ、さらにMS線毛保有細菌では集落形成も観察された。しかし、MS、MR各線毛保有細菌いずれも主に表層細胞へ付着しており、当初推察した露出した中間細胞への付着は殆ど認めなかった。また、膨化した表層細胞に付着し易い傾向も認めなかった。この事は、膀胱過伸展後見られる上皮の膨化、脱落や中間細胞の露出等の変化と易感染性との関わりが薄い事を示唆しており、より表層の粘液層等との関わりが問題となると考えられた。以上の知見より、膀胱の最表層を被う粘液層は、感染防御として重要な役割を担うことが予想された。粘液層の存在は主にRABBITで証明されているが、RATでは粘液に対する抗体等を使用した複雑な手技を用いて、電子顕微鏡で観察している文献を散見するのみである。我々は、走査型電子顕微鏡を用いて形態学的に研究を進めてきたが,文献で報告される粘液層の存在は確認できなかった。粘液層の存在をよりin vivoに近い状態で捉える為に、単純な手技で観察すべくRAT膀胱の固定、染色法を様々な条件で検討中である。
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