本年度は、生検および手術により得た膀胱腫瘍の組織片を胎児牛血清を含むRPMI11640に入れ、機械的に細切し、遠心分離し、さらに0.1%トリプシンおよび0.02%EDTA溶液にて酵素的に単離し、5×10^5/mlの濃度にて初代培養することに成功した。 初代培養成功例は42例中22例(52.4%)で、採取法は生検、膀胱全摘出術および経尿道的膀胱腫瘍切除術の間において差は認められなかった。しかしながら、乳頭状腫瘍の方が非乳頭状腫瘍よりも成功率が高かった。腫瘍採取前の抗癌剤投与では、膀胱内注入療法は成功率に影響を与えなかったが、one-shot動注療法を施行した群では、半細胞があるにも関わらず成功率が低かった。 次に0.1M酢酸にて10μg/mlの濃度に希釈したマウスIV型コラーゲンで35mmプラスチック皿をコーティングし、上記の癌細胞を分注し、接着率を調べた。アルブミンを加えたEagle'sMEMの存在下では、プラスチックに比べ、IV型コラーゲンへの接着率が高いことが明らかとなり、細胞の伸展率も同様の傾向を示すことがわかった。また、これらの相互作用を強調する高分子量の糖蛋白質であるラミニンを添加したところ、IV型コラーゲンへの接着の増加を認めた。次年度では、癌細胞におけるDNA代謝とIV型コラーゲンへの接着率との関係を調べる予定である。
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