研究概要 |
(1)BBN(N-Butyl-N-(4-hydroxybutyl)nitrosamine)投与により、ラットでは、表在性膀胱癌を生じる一方、マウスでは、浸潤性膀胱癌が発生することが知られているものの、発癌進展の差異と、癌遺伝子、細胞内情報伝達の関与についての知見は少ない。今回の研究では、ras癌遺伝子の細胞内情報伝達機構を阻害することが推測されているazatyrosineをBBNと同時に投与することにより、ラット、マウスの2つの発癌システムにおける、発癌抑制効果を検討した。 0.05%のBBNを15週間、飲水より投与し、同時にazatyrosineを、100mg/kg腹腔内投与した。BBN投与終了後もazatyrosineの投与を継続し、10週、16週、22週で、膀胱内の発癌状況(異型度、進展度)を検討した。この結果、ラットでは22週までに、azatyrosine投与群、非投与群ともに、全例表在性膀胱癌を発生したのに対し、マウスにおいては、癌細胞の異型度、および深達度が、16週では、有意にlow grade,low stageであった。また、azatyrosine非投与群では、22週までに26匹中4匹の癌死を認めたが、azatyrosine投与群には、癌死を認めなかった。(2)ヒト膀胱癌由来の培養細胞株Ej cell,T24 cell,MBT-2 cellにおいて、azatyrosineの増殖抑制効果をみたところ、各々2mg/mlで著しい増殖抑制効果がみられた。(3)以上より、rasの細胞内情報伝達をazatyrosineにより阻害することにより、浸潤膀胱癌モデルの発癌抑制が認められた。
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