前立腺癌患者を対象に、骨スキャンなどの画像診断で検出される以前に血行性転移の出現を予測しうるか否かについて、臨床的および基礎的研究を行なった。Reverse transcriptase‐polymerase chain reactionassay(逆転写PCR法)によりPSA(prostatic specific antigen)mRNAを指標として、血中前立腺癌細胞の検出を試みた。基礎的研究として、ヒト前立腺癌由来リンパ節転移継代培養細胞株(LNCaP)およびヒト胎児肺線維芽細胞株(HEL)を用いた検討では、HEL細胞の1μgのRNA中10‐4μgのLNCaP細胞のRNAにて検出が可能であり、前立腺癌細胞に対して感受性があるのみならず特異的分子マーカーとなりうる可能性が示唆された。 臨床的研究では、まず女性5人および前立腺肥大疾患者5人をコントロールとし、36症例の前立腺癌患者におけるPSA mRNAの検出を行なった。その結果、36例中16例(44.4%)に陽性に検出された。stage別の検出率は、stage Alで0/1:stage A2で0/2:stage Bで2/5:stage Cで2/8:stage D0で3/3:stage D1で1/4:stage D2で7/11であった。但し、未分化前立腺の場合にはPSAを有しない症例であることから、これらの症例での本検査法の有効性は認められなかった。今後は症例を重ね、本assayの結果と、臨床経過との相関について検討予定である。
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