研究概要 |
われわれは、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の死菌ワクチンを作成し、ワクチン接種により免疫状態が獲得され、尿路感染予防に効果を発揮できるか検討した。 先ず、高温加熱によりワクチンが作成できるか検討した。50°C、60°CではMRSAは生存し、70°Cで菌は死滅したが、蛋白が壊れている可能性が高く、ワクチンとしての使用には適さないと考えられた。次に、従来より行ってきた慢性膀胱炎ラットにおいて免疫状態が獲得されるか調べた。10^3個のMRSAおよびメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)を絹糸と共にラット膀脾内に挿入し、1週後にそれぞれ3群に分けて10^9個、10^8個、10^7個のMRSAを腹腔内に接種した。また、膀胱内に菌を接種しないラットをコントロールとし、3群に分けて同数のMRSAを腹腔内に接種した。MRSA,MSSAを膀胱内に接種した群は、菌が膀胱内に定着し10^7/mlの膀胱内尿中菌数を得た。MRSA,MSSA膀胱内接種群、コントロール群共に、10^8個のMRSA腹腔内接種で死亡例は見られなかったが、10^9個を接種したコントロール群で40%のラットが菌接種後3日以内に死亡した。MRSA,MSSA膀胱内接種群は10^9個のMRSA腹腔内接種で死亡例は見られなかった。 以上より、MSSA膀胱内感染においても全身のMRSA免疫状態が獲得されることが示された。今後、ホルマリンによるMRSAワクチンの作成を試みるとともに、より安全なMSSA局所感染を作成し、MRSAの定着予防に役立つか、検討する予定である。
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