研究概要 |
健康成人末梢血好中球(H-B-PMNs)および複雑性尿路感染症患者末梢血好中球(UTI-B-PMNs)を通常のデキストランフィコール法により分離した。健康成人尿中好中球(H-U-PMNs)および複雑性尿路感染症患者尿中好中球(UTI-U-PMNs)は、新鮮尿を採取し1200回転10分間遠心し、洗浄したものを標本とした。好中球活性化の刺激剤は、オプソニン化ザイモザン、f-MLP,PMAを用いた。G-CSFによる好中球の活性酸素増強作用についてH-B-PMNs,UTI-B-PMNs,H-U-PMNs,UTI-U-PMNsをG-CSFで処理した後、各種刺激剤を加えた。H-B-PMNs,UTI-B-PMNsにおいてケミルミネッセンスは濃度依存性に増加したが、H-U-PMNs,UTI-U-PMNsでは増加は認められなかった。次にH-B-PMNsを用い、尿素、NaCl比率を変化させ、尿類似環境下として作成しこれらに対するG-CSFの作用を検討した。H-B-PMNsにG-CSFを先に処理し、その後各種浸透圧メジウムにて処理したものをG-CSF前処理、浸透圧メジウムにより処理しその後G-CSFにて処理したものをG-CSF後処理とした。G-CSF前処理は、G-CSF後処理に比較して、各種浸透圧メジウムにおいてケミルミネッセンスの増強効果は強い傾向が認められた。これらから末梢血中において活性化された好中球は、尿中においても機能が維持されていることが示唆された。H-U-PMNs,UTI-U-PMNsで認められなかったG-CSFの増強効果がG-CSF前処理、G-CSF後処理いづれでも尿素濃度10mg/mlまでケミルミネッセンスの増加が認められた。このことは、尿類似環境下で尿素濃度を一定にコントロールすることにより、G-CSFの効果が得られることが示唆された。さらに細胞内伝達機構の阻害剤を用い、好中球の活性酸素産生増強のメカニズムについてGプロテインが関与していることを、ST638、百日咳毒素を用いて確認した。
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