1)尿素、NaClを用いて尿類似の環境を作製し末梢血由来好中球の活性酸素産生能に与える検討を行なうと、低浸透圧下では機能が維持されていたが、600m0sm/kg以上では低下した。尿素も低濃度では増加を認めたが、15mg/ml以上ではこの増強作用は認めらず、浸透圧、尿素濃度が一定にコントロールされることにより好中球機能が増強することが示唆された。 2)ニューキノロン剤による好中球の活性酸素増強作用について検討し、尿、末梢血のいずれの好中球の活性酸素の増強が認められた。さらに、浸透圧変化に関しても、本剤は活性酸素産生阻害を寛解させた結果を得た。このことは、host defenseの観点からも有益であることが示唆された。 3)G-CSFによる好中球の活性酸素増強作用について検討した。末梢血好中球を用いて得られた濃度依存性の増強作用は尿中好中球では観察できなかった。G-CSFで先に処理した後に各種浸透圧環境で処置した群は、浸透圧→G-CSF処置群に比して強い増強効果傾向が認められた。以上より末梢血中において前もって活性化された好中球は、尿中においても機能が維持されていることを示唆していた。 4)各種尿路感染症患者において活性酸素産生能を検討した。前立腺炎、女子急性単純性膀胱炎患者では、治療前後の活性酸素の産生の増加に有意な差異は認められなかった。神経因性膀胱患者に対しカテーテル留置の有無、尿細菌培養の陽陰性別に分け検討すると、活性酸素発現程度は、尿路感染症の存在する群、尿路異物のある群で高値であり、これらが、活性酸素産生能に関連していることが判明し、ひいては尿路感染症の発症は、好中球機能の低下による感染防御能の低下が原因であることが示唆された。慢性複雑性腎盂腎炎症例の活性酸素産生の低下が急性単純性腎盂腎炎に比して認められたことは、基礎疾患により炎症が慢性化することにより好中球機能が低下することが示唆された。
|