研究課題/領域番号 |
04670960
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
寺地 敏郎 京都大学, 医学部, 助手 (50207487)
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研究分担者 |
小倉 啓司 京都大学, 医学部, 助手 (80233493)
橋村 孝幸 京都大学, 医学部, 講師 (40189478)
吉田 修 京都大学, 医学部, 教授 (70025584)
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キーワード | 尿路上皮癌 / 癌抑制遺伝子 / 悪性度 / p53遺伝子 / 染色体 / ヘテロ接合性の消失 |
研究概要 |
尿路上皮癌の発生、進展に於いて癌抑制遺伝子の不活化がどの様に関与しているかを調べる目的で、多様な病期と異型度を伴う尿路上皮癌を対象に病理学的所見と対比させ、遺伝子の変化を調べた。癌抑制遺伝子が不活化される際に対立遺伝子の欠失が生じる現象を利用し、50例以上の尿路上皮癌を対象に、ヘテロ接合性の消失(以下LOHと略す)をサザン法により検出した。この結果、尿路上皮癌において染色体3p、9q、11p、13q、17pにおいて高率にLOHが認められ、これらの染色体上の癌抑制遺伝子の不活化が尿路上皮癌の発生、進展に深く関与していると考えられ、これを報告した。また病期、異型度が進につれて染色体3p、11p、13q、17pにおけるLOHの頻度は高くなりこれらの染色体上の癌抑制遺伝子の不活化が尿路上皮癌の悪性度に深く関与していると考えられた。中でもp53癌抑制遺伝子の存在する染色体17pにおけるLOHは高悪性度群の尿路上皮癌できわめて有為に高い頻度(約80%)で認められた。一方、染色体9q上のLOHは病期、異型度に関係なく初期の尿路上皮癌でも高率に認められ、尿路上皮癌の発生の初期に生じる重要な遺伝子変化であると考えられ、報告した。一方で、染色体17p上の癌抑制遺伝子の変化が(おそらくp53遺伝子と考えられるが)尿路上皮癌の悪性度に深く関与していると考えられるため、この遺伝子変化をとらえることが、従来の病理組織学的な悪性度の判定とは違った、予後、悪性度判定の指標になりえる可能性が示唆される。現在、我々は17p上にp53遺伝子の変異をPCR法を用いて解析するとともに(投稿中)、抗p53抗体による免疫染色によりp53遺伝子の異常が予後判定因子になり得るか否かも調べている(投稿準備中)。更に、PCR法を用いて微量の組織よりLOHを検出する試みも行っており、遺伝子変化をとらえることにより、尿路上皮癌の診断、悪性度の判定を行うことを目指している。
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