本研究では全尿を用いた結晶形成実験モデルを用いて種々の物質の結晶形成抑制効果を検討するとともに、尿路結石患者の尿と正常人の尿との違いについて詳細に検討することを目的とした。 実験1尿より酸性ムコ多糖)を抽出し、蓚酸カルシウム結晶形成における抑制効果を市販のそれらと比較検討した。市販の酸性ムコ多糖とよく似た抑制活性を持つことが判明し、結晶形成における研究において市販のそれらを尿中の酸性ムコ多糖の代わりとして用いてもよいことがわかった。 実験2尿路結石患者と正常人の尿における蓚酸カルシウム結晶形成の差異を比較検討したところ両者間に差を認めた。また、それらの尿中より高分子物質を除くことにより、互いの結晶形式に差を認めなくなった。以上より尿路結石患者と正常人の尿における結晶形成の差異は尿中高分子物質によることが判明した。 実験3実験2において尿路結石患者と正常人の尿中高分子物質に差異があることがわかったがそれがそれらの量的または質的な差異なのかを検討するため、両者より尿中高分子物資を抽出し、人口尿を用いたMSMPR法にて測定検討した。両者の結晶形成の差異は尿中高分子物質の質的差異ではなく量的差異である可能性が強いことがわかった。 実験4クエン酸製剤を内服した際、その尿のpHが6.5に近い値またはクエン酸排泄量が2mM/L以上になっている時にはじめてクエン酸製剤の尿路結石にたいする強い予防効果を期待できることが判明した。 このシステムを用いることより従来からの結石予防薬について再評価することが可能であり、そのほか種々の食事の影響も見ることが出来る。特に動物性蛋白質を過剰摂取した際の尿中の変化もこのシステムにおいて測定可能である。今後もこの測定システムをもちいて、尿路結石の再発予防に役立てたいと思う。
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