研究概要 |
腎細胞癌が化学療法に抵抗性を示す原因の機序の1つとして、腎癌細胞での抗癌剤耐性遺伝子の過剰発現が示唆されている。 これまで、耐性遺伝子のうちmdr1の腎癌組織での過剰発現が報告されているが、我々はこの他の耐性関連遺伝子としてGST-pi遺伝子やDNAtopoisomeraseII(トポII)遺伝子の発現について培養系腎癌細胞及び手術時に摘出した腎癌、さらにその近傍の正常腎組織において検討した。 また、術前のインターフェロンa(IFN)2週間連日投与がこれらの遺伝子の発現に及ぼす効果も検討し、以下の結果を得た。 1)mdr1の発現は正常腎組織と腎癌組織で同程度にみられ、IFN投与でも変化はみられなかった。 2)GST-pi遺伝子の発現は腎癌組織よりも正常腎組織の方が強く発現している傾向がみられ、IFN投与で発現の補強傾向がみられた。 3)トポII遺伝子の発現は正常組織より腎癌組織の方が強くIFN投与で減少する傾向がみられた。 4)培養系腎癌細胞をIFNで2週間培養後、トポII子の発現量と各種抗癌剤(Adr,VP-16,5Fu,CDDp)の感受性を検討したが、有意な差はみられなかった。 以上より、腎癌細胞における抗癌剤耐性にmdrlの他、トポII遺伝子の関与が示唆されたが、IFNが直接的にトポII遺伝子の発現に影響を与えているかどうかは明かでなかった。今後、条件を変えてこの点を明かにしていきたいと考えている。
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