我々は膀胱癌の生検により得られた組織より、mRNAを抽出し、代表的な核内癌遺伝子であるc-mycの発現を調べているが、現在までに35例の症例のうち21例(60%)にC-mycの過剰発現が認められている。腫瘍の細胞学的悪性度(Grade)別ではGrade1で7例中3例(43%)、Grade2で16例中8例(50%)、Grade3で12例中10例(83%)と悪性度が高くなるに従ってC-mycの過剰発現する頻度が高くなる傾向を得た。また腫瘍の浸潤度ではpT_1以下の表在性腫瘍では20例中8例(40%)の発現であるのに対してpT_2以上の浸潤癌では15例中13例(87%)であり、高悪性度、高浸潤度の腫瘍にC-myc遺伝子の過剰発現する傾向を認めており、更に臨床像との相関につき解析中である。 また既に我々はヒト膀胱癌細胞T-24に電気パルス穿孔法によるc-myc遺伝子の挿入に成功しており、C-myc遺伝子の挿入により膀胱癌細胞のIn vitro、In vivoでの増殖性、浸潤性で高まるという結果も得ており、C-myc遺伝子がヒト膀胱癌の諸性質に深く関与することが示唆されている。 また我々は代表的なヒト癌抑制遺伝子であるP53、RB遺伝子の膀胱癌組織における欠失等の異常を検出しており、P53は25例中8例(32%)に、またRBは15例中4例(27%)に異常を認めており、現在臨床像との相関について解析中である。
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