本年度は主に精子の運動性におよぼす電位の効果について検討した。方法は、高さ20μmの精子算定用チャンバーの両端より電極を挿入し、電位負荷時における精子の運動性をコンピューター画像解析装置(CellSoft 3000)によって調べた。その結果、電位負荷による精子運動に対する直接的影響は複数の要因に区別されることが明らかになってきた。その一つは、高イオン強度下で見られるもので、比較的低電位の条件でも生ずる陽陰両電極の周囲に限局して起こる運動性の低下であった。これは精子運動のpH特性の検討から見て、精子運動にとって許容されるpH条件の範囲が比較的狭いので、電極周囲で生ずるpH環境の変化と関連することが推定された。もう一つは、低イオン強度化で電位負荷を行ったときに観測される精子運動の低下で、この効果は電極周囲以外にも電極間の任意の位置で見られ、低電位では惹起されず、きわめて高電位の負荷においてみられる効果であった。後者の効果は精子細胞膜の酸化が関与していると思われ、現在ルミノメーターによって解析を進めようとしている。
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