電気刺激法によるラット(12週齢ウィスター系)精巣上体尾部からの精子回収では、ピーク電圧70V、パルス幅250μs、20Hz、30秒の刺激で回収精巣上体液量平均10.5±2.2μl、回収精子数46(±14)×10^6と効率的に精子を回収することが可能であった。この手法においては、回収精子に不純物が少なくF12に分散させるだけで運動精子が得られることが特徴である。電気刺激法では刺激時に精子に電位が加わるため、高電位では精子の運動性をそこなうことが予想される。そこで精子にたいする電位負荷がヒト精子の運動性に及ぼす影響を調べると、精子の運動性喪失の機序は大きく二つに分類され、一つは、低イオン強度下での高電位負荷時に見られる運動性喪失で、運動精子の50%が運動停止に要する電位勾配は160V/2mmであった。これにたいし高イオン強度下では電極周囲においてのみ認められて電極間では運動性喪失が起こりにくいことから、高イオン強度下での電気刺激のほうが運動精子回収法として適していることが明らかとなった。ヒトに対する応用では、症例数が少なく断定的な結論をうることができなかったが、少量の逆行性射精を伴う機能性閉塞症例で、本手法により高濃度、高運動率の精子回収が可能であることが多い傾向にあった。これにたいし、完全閉塞例では精巣上体管液が多量に回収されても、中に精子が存在しないことが多く、また非閉塞例では精巣上体管液の回収自体が困難な症例が多く認められた。したがって、現時点での本手法の適応は傍大動脈リンパ節廓清などによる機能的な閉塞にあるものと考えられた
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