研究概要 |
予後不良因子を有する症例や通常の化学療法に抵抗する症例など、いわゆる難治性精巣腫瘍に対して、自家末梢血幹細胞移植術(PBSCT)併用超大量化学療法の有用性を検討した。対象は難治性精巣腫瘍5例で、年齢は31〜50歳(平均36.8歳)であった。巨大腹部腫瘤を有する3例、多発性肺転移を有する1例、巨大腹部腫瘤と肺転移を有する1例であった。組織型はseminoma3例、embryonal carcinoma 1例、teratocarcinomaを含む複合組織型1例であった。まず末梢血幹細胞を採取するためにetoposide大量療法(VP-16 500mg/m^2×4日)を採取前化学療法として施行した。白血球がnadirとなった時点からrG-CSF 250μgを連日投与し、骨髄回復期に連続血液成分分離装置を用いてapheresisを行った。採取した細胞はPercoll二層比重遠心法により分離、凍結、保存し、メチルセルロース法で幹細胞の定量を行った。5例に対して延べ9回のapheresisを行い、1回当たりGFU-GM数として5.9〜54.3(平均25.8)×10^5/kgを採取できた。いずれも1回のapheresisで安全な移植に必要とされる2×10^5/kg以上のCFU-GMを採取できた。同時に十分な抗腫瘍効果も認めた。このように採取前化学療法としてetoposide大量療法をBEP療法前に行えば、効率的に幹細胞を採取できることがわかった。この5例に対して、引き続いてBEP療法を行ったところ、3例はCRとなった。PRであった2例に対して、PBSCT併用超大量化学療法(CBDCA200mg/m^2×4日,VP-16 250mg/m^2×4日,CPM50mg/kg×2日)を行った。移植したCFU-GM数は各々9.7、15.0×10^5/kgであったが、血液学的回復は速やかで、重篤な合併症もなく、2例とも完全寛解(16、4ヵ月間無腫瘍生存中)となった。 以上のように、本研究は計画通り順調に進行し、成果をあげることができた。
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