局所浸潤性膀胱がんに対する補助化学療法に関する基礎的研究

1993 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 04670976
• 研究機関: 奈良県立医科大学
• 研究代表者: 岡島 英五郎 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (50075115)
• 研究分担者: 大園 誠一郎 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (00183228) ; 平尾 佳彦 奈良県立医科大学, 医学部, 助教授 (00133207)
• キーワード: 浸潤性膀胱がん / 化学発癌 / N-butyl-N-(4-hydroxybutyl)nitrosamine(BBN) / 化学療法 / マウス

研究概要

マウスの膀胱発がんモデルを用いて、化学療法を施行し、病理組織学的にその結果を観察するとともに、経時的にflowcytometryにより膀胱上皮細胞のDNA ploidyを測定し、これらを比較検討することにより、今後の臨床的に有用な集学的治療体系を確立することを本研究の目的とした。そこで、平成5年度はマウスN-butyl-N-(4-hydroxybutyl)nitrosamine(BBN)膀胱がんモデルを用いて、M-VAC(MTX+VBL+THP-ADM+CDDP)療法の影響を抗腫瘍効果(実験1)と腫瘍発育抑制効果(実験2)の両面から検討した。すなわち、実験1では、0.05% BBN 12週投与終了後放置し、28週後より4週間隔で3回M-VAC療法を行った。一方、実験2では0.05% BBN 12週投与後より4週間隔で3回 M-VAC療法を行った。
その結果、実験1において、BBN単独群では表在性がん4/14(29%)、浸潤性がん8/14(57%)、上皮内がん(CIS)2/14(14%)、の発生が見られ、担がんマウス数は13/14(93%)であった。一方、BBN+M-VAC群では各々1/11(9%)、6/11(55%)、2/11(18%)の発生がみられ、担がんマウス数は7/11(64%)でM-VAC療法による抗腫瘍効果は見られなかった。次いで、実験2において、BBN単独群では表在性がん11/27(41%)、浸潤性がん18/27(67%)、CIS4/27(15%)の発生がみられ、担がんマウス数は25/27(93%)であった。一方、BBN+M-VAC群では各々8/27(30%)、15/27(56%)、1/27(4%)の発生が見られ、担がんマウス数は19/27(70%)で、担がんマウス数において両群間で有意な差がみられ(p<0.05)、M-VAC療法により腫瘍発育は抑制された。すなわち、M-VAC療法は、マウス膀胱がんに対する抗腫瘍効果は示さないが、発育抑制効果を示したことより、膀胱がんの補助化学療法としての有用性が示唆された。

研究成果

• [文献書誌] 松木 尚・他: "尿路性器悪性腫瘍におけるcirculating immune complexesの検討" 奈医誌. 43. 34-40 (1992)
• [文献書誌] Hisashi Matsuki et al.: "Effects of various chemicals on the development of mouse urinary bladdertumors induced by N-butyl-N-(4-hydroxybutyl)nitrosamine." J.Toxicol.Pathol.5. 50-60 (1992)
• [文献書誌] Yoshiki Hayashi et al.: "Effects of combination chemotherapy including cyclophosphamide,THP-adriamycin, and cisplatin on the development of urinary bladder carcinoma induced by N-butyl-N-(4-hydroxybutyl)nitrosamine in rats." J.Toxicol.Pathol.5. 61-66 (1992)
• [文献書誌] Tsutomu Shirahama et al.: "The binding site for fucose-binding proteins of Lotus tetragonolobus is a prognostic marker for transitional cell carcinoma of the human urinary bladder." Cancer. 72. 1329-1334 (1993)
• [文献書誌] Eigoro Okajima et al.: "p53 Gene mutation in urinary tract cancers" Akt.Urol.24. 96-98 (1993)
• [文献書誌] 平尾佳彦・他: "尿路性器癌培養細胞の細胞増殖におよぼすRhodamine 123の影響" 泌尿紀要. 39. 1233-1240 (1993)
• [文献書誌] 岡島英五郎・他: "抗癌剤感受性試験の現況と将来展望について" 医学のあゆみ. 165. 864-866 (1993)
• [文献書誌] 岡島英五郎・他: "膀胱の微小癌" 泌尿器外科. 7. 9-13 (1994)
• [文献書誌] 高島健次・他: "Cytotoxic chemotherapy施行前における骨髄像検査" 奈医誌. 45, (印刷中). (1994)
• [文献書誌] 趙 順規: "浸潤性膀胱癌における免疫学的パラメータの変動の検討" 奈医誌. 45, (印刷中). (1994)
• [文献書誌] Seiichiro Ozono et al.: "Evaluation of chemotherapy in bladder cancer." Churchill Livingstone, 7 (1992)
• [文献書誌] 岡島英五郎・他: "泌尿器科 Mook No.5:表在性膀胱腫瘍に対する抗癌剤注入療法" 金原出版, 10 (1993)
• [文献書誌] 岡島英五郎・他: "モダン・クリニカルポイント 泌尿器科:経尿道的膀胱腫瘍電気切除術" 金原出版, 2 (1993)
• [文献書誌] 大園誠一郎: "モダン・クリニカルポイント 泌尿器科:浸潤性膀胱癌に対するminimally invasive surgery." 金原出版, 2 (1993)
• [文献書誌] 岡島英五郎: "がん診療Q&A:膀胱がんに対するTUR療法" 六法出版社, 4 (1993)