本研究はBCGの表在性膀胱癌に対する抗腫瘍効果の機序を明らかにすることを目的に計画されたものである。前年度において、我々は膀胱癌に対するBCG膀胱内注入後に生ずる尿中白血球増加現象がBCGの注入により膀胱粘膜下に生じた免疫反応によって産生された様々なサイトカインによる可能性を示唆した。 今年度はBCG注入により惹起される膀胱局所におけるこれらのサイトカインのネットワークが究極的に腫瘍を破壊する可能性を証明するために、in situ hy bridizationを用いて膀胱粘膜下に形成されるリンパ濾胞内の活性化リンパ球にそれぞれのサイトカインのメッセンジャーRNAを組織学的に直接証明するとともに、臨床的にはBCG免疫療法患者の尿中サイトカイン濃度と各々の患者の膀胱癌再発率を検討した。組織学的検査ではBCG後の膀胱粘膜下にBCGによる遅延型過敏反応によるリンパ濾胞や肉芽腫が成立を証明できたものの、年度内にin situ hybridizationの手法を獲得できず組織学的にこれらサイトカインを直接証明することができなかった。臨床的にはBCG注入後の尿中に腫瘍壊死因子(TNF)やG-CSFが高濃度に産生する患者では約2年間の観察で膀胱癌再発が少ないことをないこと証明した。今後も膀胱局所におけるこれらのサイトカインのネットワークが究極的に腫瘍破壊に関与することを証明して行きたい。
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