35歳以上の人間ドック受診者のなかで発見された無症候性顕微鏡的血尿患者137名を3年間経過観察し、その期間中に発見もしくは発症した泌尿器科学的疾患の頻度を性別ならびに年代別に検討した。無症候性顕微鏡的血尿を呈した症例の56%になんらかの泌尿器科学的疾患が検出され55歳以上の男性に重篤な泌尿器科学的疾患が6.7%含まれることが明らかとなった。膿尿を伴わない無症候性顕微鏡的血尿を呈し、かつあきらかな出血部位が判明している泌尿器科学的疾患もしくは腎糸球体疾患患者15名を対象として、尿中赤血球の形態ならびに光増感物質の摂取分布過程を検討した。走査電子顕微鏡による形態的解析により、1例をのぞき14例で糸球体疾患か泌尿器科学的疾患かの鑑別が可能であった。走査電子顕微鏡での観察により糸球体疾患症例での尿中赤血球はあきらかな形態の不均一性が示された。光化学物質の赤血球の取り込みはフェオフォーバイド(Ph-a)がヘマトポルフィリン誘導体と比較して水溶性の性質のためか摂取率は良好であった。アルブミン濃度30mg/mlから400mg/mlまではこの摂取率は一定でこの範囲内では赤血球膜のPh-aの摂取率には影響を受けないことが明らかとなった。アルブミン濃度を70mg/mlとした場合のPh-aの摂取率は溶液中のPh-a濃度に依存しておりレーザー顕微鏡での観察ではほぼ正の相関を示した。Ph-aの至適濃度は4μg/mlであり、添加2時間後には赤血球内に均等に分布する蛍光が観察された。臨床的に糸球体腎炎の既往がある症例の尿中赤血球を回収し同様にin vitro でPH-aの摂取率を観察したが、添加30分後よりPh-aの取り込みが開始され、さらに蛍光の分布は不均一であった。今後さらに検討すべき点もあるが下部尿路出血症例での赤血球に比較し赤血球膜の光化学物質透過性に明らかな相違が認められることから、血尿の原因疾患の鑑別に有用と考えられた。
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