研究概要 |
最近、ヒト腸内に蓚酸を分解する菌が存在することが報告された。このことが、腸内における蓚酸の分解・吸収ひいては蓚酸の尿中排泄量にどの程度の影響を与えているかは不明である。そこで、ヒト糞便より蓚酸分解菌を分離し、この菌体より蓚酸分解酵素を抽出分離することを試みた。 Barber液体培地に成人男子糞便を約5〜10%加え、37℃、嫌気下に培養した。長期継代することにより蓚酸分解菌を選択した。蓚酸分解活性は嫌気条件下における培養時のみ維持可能であった。培養により選択された菌は数種類のグラム陰性菌の混合したものであり、まだ単一菌を得るにはいたっていない。 得られた細菌をsonicationした後、冷却遠心器で12,000rpm、25分遠沈して、上清を得た。これを硫安分画し、DEAEおよびDMセルロースクロマトグラフィー、分子篩クロマトグラフィーをおこなった。また、活性分画のアミノ酸分析を行なった。DEAEおよびCMセルロースクロマトグラフィーの両者で酵素活性は低いNaCl濃度で溶出された。 pH7.0では蛋白の等電点に近いので陰イオンまたは陽イオン交換樹脂では充分に捕足されないためと考えられる。紫外部吸収スペクトラムにおいて、280nmにおける紫外部吸収が比較的弱いのは芳香族アミノ酸含量が少ないことをあらわしていると思われる。アミノ酸分析の結果では、グリシンとアラニンを比較的多く含み、塩基性、疎水性、および芳香族アミノ酸は少なかった。 つぎの段階としては、蓚酸分解菌を同定し、1種類の菌体より酵素を分離・精製したい。腸内の蓚酸分解菌から蓚酸分解酵素を分離精製できれば、本酵素と腎結石形成との関係について、さらには結石の再発予防、結石溶解などへの応用の可能性についても検討できるであろう。
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