研究概要 |
1.精路閉塞患者の血清抗精子抗体の検討:精管切断術後10例,小児期鼠径ヘルニア根治術による精管閉塞症例18例,精巣上体での閉塞症例18例について,血清抗精子抗体をlndirect immunobead試験で測定した結果,23例50%でlgG抗体陽性,6例13%でigA抗体陽性,lgM抗体陽性例はなかった.抗体陽性の頻度は,精管切断術後症例と鼠径ヘルニア手術後の症例で差を認めなかったが,精巣上体での閉塞症例では低い傾向があり,特に先天性精管欠損の症例4例には陽性例がなかった.鼠径ヘルニア手術後の症例で,精路内圧上昇による二次的な精巣上体での閉塞の可能性の有無で抗体陽性の頻度を比較したが,差はなかった. 2.精路閉塞症における精巣組織所見の検討:精路閉塞以外に造精機能に影響する既往や異常所見のない症例(血清抗精子抗体陽性10例,陰性10例)において,精巣生検で得られた精巣組織の精子形成能を詳細に検討した.精細管断面当たりの精祖細胞,精母細胞,精子細胞のSertoli細胞に対する比(Sertoli cell ratio)は,抗精子抗体陽性例,陰性例,以前に検討した左精索静脈瘤患者の右側精巣組織(コントロール)との間で有意の差を認めることはできなかった. 3.モルモット,マウス,ラットでの血清抗精子抗体の測定法を,酵素抗体法などで検討したが,適切な測定法を確立することができなかった.今後は,精路閉塞実験を開始し,平行して抗精子抗体測定法の確立を目指す.
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