研究概要 |
体重380g〜600gの成熟モルモット12匹を2群に分け,精管切断術が精子形成能に及ぼす影響を検討した。精管切断群(7匹)は,ネンブタールおよびエーテル麻酔下に右陰嚢切開で精巣を露出し,精管を直部で切断した。対照群(5匹)では,同条件で精巣を露出し,そのまま再び閉腹した。6カ月後に屠殺し、左右精巣を摘出し,フローサイトメータを用いて精巣組織のDNA解析を施行した。この結果,切断群の切断側精巣のDNAヒストグラムで1C分画は23.6±23.6%であり,反対側精巣の1C分画77.2±1.7%に比べて有意に低値を示した。一方,対照群の手術側精巣は,1C33.5±22.9%とやはり低値を示し,精管切断術を行わなくても精子形成能を著しく障害していた。精巣重量も,手術側精巣は,精管切断群0.51±0.52g,対照群1.20±0.73gと反対側(それぞれ2.50±0.49g,2.28±0.26g)に比べて有意に低値であった。精管切断群の1C分画は,正常モルモット精巣の1C分画と差を認めなかった。このように,今回の研究では,精管切断術は精子形成能を著しく障害したが,反対側精巣には影響せず,抗精子抗体の影響はないと判断された。さらに,対照群でも精巣重量の減少と精子形成能の障害を認めたことから,造精機能障害の発生機序は,精巣切断術のほかに,精巣の露出,腹腔内臓器との癒着など,他の要因によるものが疑われた。以上の実験結果から,免疫抑制動物での精子形成能に及ぼす精管切断術の影響については,検討することができなかった。
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