研究概要 |
1.臨床的研究 (1)精路閉塞患者の血清抗精子抗体の検討:精管切断術後12例,小児期鼠径ヘルニア根治術による精管閉塞症例21例,精巣上体での閉塞症例12例,先天性精管欠損症7例について,血清抗精子抗体をIndirect immunobead試験で測定した結果,24例46%でIgG抗体陽性,8例15%でIgA抗体陽性,IgM抗体陽性例はなかった.抗体陽性の頻度は,精管切断術後75%,鼠径ヘルニア手術後57%,精巣上体閉塞25%,先天性精管欠損症0%で,精巣上体での閉塞症例は有意に低かった. 鼠径ヘルニア手術後の症例で,精路内圧上昇による二次的な精巣上体での閉塞の可能性の有無で抗体陽性の頻度を比較したが,差はなかった. (2)精路閉塞症における精巣組織所見の検討:精路閉塞症32例において,精巣組織の定量的解析を行った. 精細管断面当たりのSertoli細胞および各精細胞の数,精細胞胞のSertoli細胞に対する比は,閉塞期間,閉塞原因,血清抗精子抗体の有無で差を認めなかったが,精細管基底膜の厚さは,鼠径ヘルニア術後症例に比べて精管切断術後症例で厚く,閉塞期間が短いほど厚かった.血清抗精子抗体は精子形成能を障害しているとは考えられなかった. 2.基礎的研究 成熟モルモット12匹を用いて,精管切断術が精子形成脳に及ぼす影響をフローサイトメーターを用いて検討した。精管切断術後6カ月目に屠殺検討したところ,切断側精巣の精子形成能は著しく低下したが,反対側精巣には影響なく,さらに,sham operationを施行した対照群でも手術側の精子形成能障害を認めた.精管切断術は反対側精巣の精子形成能を障害せず,また,切断側精巣の障害も精管切断以外の要因の関与が疑われた.
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