研究概要 |
1.絨毛癌2症例において,PCR法を用いたDNA polymorphism解析により,その発生母地となった妊娠を同定することに成功した.第1例は3回の正常妊娠後,第2例は2回の正常妊娠と1回の胞状奇胎後に絨毛癌を発症した症例であった.DNA polymorphism解析の結果,第1例では3回目の正常妊娠から,第2例では最後の正常妊娠ではなく,それ以前の胞状奇胎から絨毛癌が発生したことが明らかになった.第2例においては,発生母地となった胞状奇胎がヘテロ奇胎であることも判明した.絨毛癌DNAはいずれも,手術摘出標本のパラフィン包埋ブロックの切片から抽出されたものであり,本研究におけるPCR法の有用性が再確認された.この実績を基に今後,絨毛癌症例の収集,ならびに同様のDNA polymorphism解析を進め,絨毛癌を続発した胞状奇胎における各染色体の接合性を決定していく予定である. 2.当初,制限酵素認識部位の有無,あるいはアレル特異的なオリゴプローブとのハイブリダイゼーションの有無によって検出されるpolymorphism部分をPCR法により増幅し,各試料間で比較検討していた.しかし,反復塩基配列の数の相違(minisatellite・microsatellite)に由来するDNA polymorphismが,情報量・検出の簡便性においてはるかに優れていることを認め,現在はこのタイプのDNA polymorphismを中心に解析を進めている.この新しいタイプのDNA polymorphism解析が,本研究の進行を大いに促進することが期待される.
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