研究概要 |
1.本年度においては,さらに絨毛癌4症例について,PCR法を用いたDNA解析を行いそれらの責任妊娠を同定した.絨毛癌DNAは,ヌードマウス移植腫瘍(2例),新鮮手術標本(1例),樹立細胞株(1例)から抽出した.これら4例中3例が胞状奇胎から発生した絨毛癌であった.ただし,いずれの例においても現在までのところ,ヘテロ接合を示す染色体対は認められておらず,ヘテロ奇胎か否かは決定されていない. 2.同一妊娠において胎児部分と胞状奇胎部分を認めた場合,1)部分胞状奇胎あるいは,2)正常妊娠+全胞状奇胎の組み合わせの双胎妊娠の2通りの可能性があるが,肉眼的・組織学的に両者を区別することはしばしば困難である.さらに,前者から絨毛癌を含む続発症が発生することは稀であるのに対し,後者からの発生は通常の全胞状奇胎と同様に高率である.したがって,遺伝学的に両者を正確に鑑別することは,臨床的に意義があるが,それのみならず本研究の方法論の確立ならびに対象症例の抽出の観点からみても重要である.そこで,胎児部分と胞状奇胎組織の共存する妊娠4症例について,同様のDNA多型解析を行った.その結果,全例で,臍帯・胎盤絨毛試料においては患者・夫双方由来のバンドを,奇胎試料においては夫由来のバンドのみを認め,正常妊娠と全胞状奇胎の双胎妊娠であることが明らかになった.これらのうち1例は絨毛癌を続発したが,発生母地となった胞状奇胎はヘテロ奇胎であった. 3.我々が直面している問題は,絨毛癌組織の収集が非常に困難であるという点である.これは,絨毛癌発症率の急減,ならびに治療の主体が化学療法となり手術例が限られていることに起因している.したがって,今後は自施設のみならず広く他施設に協力を求め,標本収集に努める必要性がある.
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