研究概要 |
子宮頚部病変におけるヒトパピローマウィルス(HPV)の関与を検討するために,1.各種HPV検出法の比較検討,2.HPV感染例のprospectiveな検査,3.子宮頚癌発症例のretrospectiveな検査.を行った。 1.HPV感染の診断法として,細胞診,組織診,免疫組織化学,徴微形態学観察の他,近年分子生物学の進歩による各種HPV DNA診断法の比較検討を行った。Dot blot法,In situ hybridizaton法(ISH)は,HPVの検出法として信頼性の高いSouthern blot法と比較し,感度,特異性ともに優れていた。またISH法をもちいて,細胞や組織レベルでの形態観察と同時にHPV DNAの局在や型同定を行った。ISH法でのHPV-DNA検出部位は,強いシグナルはKoilocytosisなどHPV感染に伴う形態変化がみられる部位と関連していた。また弱いシグナルは高度異形成や上皮円癌の全層でみられた。 2.ドットブロット法,ISH法にてHPV DNAの検出を行った症例のprospectiveな検索では,HPV非感染例に比しHPV感染例で,またHPV感染例の中ではいわゆるlow risk群に比し,high risk群で,高率に病変の進行例がみられた。 3.子宮頚癌発症例のretrospectiveな検査では,過去の検診時の組織診で,いわゆるhigh risk群のHPV DNAが検出され HPV感染がすでに存在していることが示された。 以上,HPV感染の診断法の確立,型別存在様式の比較およびprospective,retrospectiveな検査を行うことにより,子宮頚部前癌病変,頚癌のNatural history,haths genesisの解明のための研究を行い,HPV感染と子宮頚部病変との関連性が徐々に明らかにされた。
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