研究概要 |
本年度に先ず、骨代謝、即ち骨の吸収と形成に直接関与する破骨細胞骨芽細胞の機能的バランスに影響をおよぼす因子としてエストロゲン取り上げ、GnHR agonist処置で誘発した低エストロゲン状態での骨量よび骨形態・組織の変化と、これに対する漢方薬の一つである八味地丸の影響をラットを用いて検討した。 ラット大腿骨全体の骨量はGnHR agonistで誘発した低エストロゲン態で有意に低下、八味地黄丸投与でこの低下が阻止された。また脛骨脱灰縦断切片において骨形態・組織の変化を観察すると、% total trecular areaはGnHR agonist処置ラットで有意に低下したが、trabular number、trabecular separation、tetracyclineとcalsein間隔、灰標本でのosteoclast number/trabecular perimeterには有意差はられなかった。以上の成績はGnHR agonistで低estrogen状態にしラット骨代謝の主な変化は骨吸収の亢進であり、八味地黄丸にこれを止する作用があると考えられる。また、破骨細胞数に著変がないことGnHR agonist処理がラット骨細胞に機能的抑制をもたらしたと考えれる。 次に腎でのカルシウムの吸収と骨代謝との関連を検討する研究の一環して、腎でのカルシウムの吸収を調節するビタミンD代謝の変化を、毒性作用を有する化学療法剤を長期投与された症例を対象に分析した。人科悪性腫瘍患者にCDDPをベースとした化学療法剤による治療を34週間の間隔で5コース行うと、ビタミンDの代謝物質である25-24,25-D3、1,25-D3の中で1,25-D3血中レベルのみが治療開始ととに低下し、治療終了後3-4カ月で前値に復することが明かとなった。の結果は化学療法がビタミンD・カルシウムを介して骨代謝に影響す可能性を示唆している。
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