胎盤・臍帯血管組織におけるbasic FGFの発現と生成状況に関する研究ー妊娠中毒症の病態解明を目的としてー

1992 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 04670994
• 研究機関: 山梨医科大学
• 研究代表者: 安水 洸彦 山梨医科大学, 医学部, 助教授 (80107705)
• キーワード: basic FGF(bFGF) / bFGF-EIA / 妊娠中毒症 / 胎内発育遅延 / 子宮筋腫 / フィブロネクチン

研究概要

平成4年度の研究では、組織内basic FGF(bFGF)測定法の確立と、妊娠中毒症症例におけるbFGF生成状況の観察を主体とした。得られた研究実績は以下の如くである。
1.認識部位が異なる2種の抗ヒトbFGF モノクローナル抗体(MAb52,MAb78)を用いたtwo-site EIAのシステムを確立し、その定量性を検討した。その結果、本法は定量性に優れ、今後の研究のための方法として十分使用可能であることが確認されえた。
2.上記の方法を用い、胎内発育遅延(IUGR)合併重症中毒症例においては、胎盤内bFGF産生が有意に抑制されていることが判明し、妊娠中毒症の病態にbFGFが関与していることが示唆された。
3.bFGF測定法開発の過程で、子宮筋腫組織および子宮筋組織内bFGFを定量した。子宮筋腫組織内bFGFは筋層内のそれに比し、有意の高値であり、また抗エストロゲン作用を有するGnRHアナログ投与例では価値であったことから子宮筋腫の発育に対してもbFGFの関与が示唆された。
4.既往妊娠中毒症例および慢性腎会合併の妊娠より、経時的採血を行い、各種血中パラメーターの中毒症発症の予知性を検討した。その結果、血中フィブロネクチン値が最良の予知因子であることが判明した。
なお、上記2〜4の研究はすべて事前に、患者の文書による同意を得たうえで行った。

研究成果

• [文献書誌] 安水 洸彦,加藤 順三: "生殖臓器におけるangiogenesis" ホルモンと臨床. (1993)
• [文献書誌] 長坂 正仁,安水 洸彦,長坂 久司,加藤 順三: "Basic fibroblast growth factor(b-FGF)のヒト胎盤組織内濃度の測定及びその妊娠に伴う変動に関する研究" 日本産科婦人科学会雑誌. 44. 331-335 (1992)
• [文献書誌] 安水洸彦,長坂 正仁,長坂 久司,加藤 順三: "胎盤および胎盤循環網形成におけるbasic fibroblaot growth factor(basic FGF)の生理的意義について" 産婦人科の世界. 44. 189-195 (1992)
• [文献書誌] 安水 洸彦,加藤 順三: "IUGR合併の有無を主眼とした妊娠中毒症臨床像の検討" 産婦人科の実際. 41. 541-545 (1992)
• [文献書誌] 安水 洸彦,加藤 順三: "Angiogenesisおよびangiogenic factrosの概念とその臨床領域における展開" 産科と婦人科. 59. 1375-1380 (1992)
• [文献書誌] 長坂 久司,安水 洸彦,永井 聖一郎,加藤 順三: "出生前に診断しえたVATER連合の1例ー本邦報告例の疲労的・症候学的考察ー" 日本産科婦人科学会雑誌. 44. 1193-1195 (1992)