研究概要 |
HPV16型DNA E_6E_7領域を制限酵素により切り出し、これを発現ベクターに挿入後、このハイブリッドDNAを大腸菌にトランスフェクト1,E_6E_7蛋白とφ10(発現ベクターT_7遺伝子由来蛋白で12個のアミノ酸より成る)の融合蛋白を産生するクローンを得た。E_6,E_7蛋白は上記発現ベクターが組み込まれた大腸菌よりイソプロピールチオガラクトシドで誘導しφ10との融合蛋白として得る。これを塩析法で精製し、φ10を含む特異蛋白として抽出した。これら得られたE_6E_7蛋白を用いて血清中の抗体価測定系を確立した。また、融合蛋白を免疫原として、ウサギポリクローナル抗体を作製し、この血清を陽性コントロールとした。我々の開発した人血清中のHPV16E_6E_7蛋白に対する抗体価の測定系はELISA法で、高感度、高特異性、高再現性を示した。このELISA法による測定系を用いて実際の患者血清について測定したところ、健常婦人では38人中全例、E_6E_7抗体は陰性であった。しかし、子宮頸部上皮内癌の患者26例中E_6抗体は5例(19%)E_7抗体は2例(8%)に陽性で、子宮部浸潤癌では30例中E_6抗体は8例(27%)、E_7抗体は10例(33%)に陽性であった。さらに血清抗体陽性者は全例癌組織中におけるDNAにHPP-DNAを認めた。従って、本測定系に局所におけるHPV感染を反映するものであり、測定法を比較的簡便であるため臨床の場で応用できるものと期待される。
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