基礎実験として、非放射性マイクロスフェア法を使用して、胎仔各臓器の血流量測定を行った。その結果、放射性マイクロスフェア法とほぼ同様の測定値となり、充分に血流量を反映できると判断した。方法はヤギ胎仔の慢性実験モデルを作成し、マイクロスフェアの投与経路による各臓器血流量測定の影響、更に、各臓器サンプリング量による再現性の問題を検討した。ヤギ胎仔の上大静脈及び下大静脈より、約200万個のマイクロスフェアを注入し、ヤギ胎仔死亡後各臓器より抽出した。正確な量を抽出するには、1g以上の臓器サンプリングが必要であると判明した。 低酸素条件での実験では、脳、心、副腎などでの各臓器血流は、低酸素1時間、6時間で増加し、12時間、24時間となるにつれてコントロール値まで減少してきた。この変化は大脳、小脳に比較して、脳幹、延髄で顕著であった。また、腎、消化器、筋肉などでは、1時間、6時間、12時間と減少傾向を示した。以上の結果より低酸素状態においてヤギ胎仔は、重要臓器への血流再配分を行う様に反応するが、慢性の低酸素状態では、12時間以後にコントロール値へ復する傾向のあることが認められ、胎仔の適応能力の一つと考えられた。今後、子宮内胎児発育遅延、妊娠中毒症などの慢性低酸素状態の考えられる病態においての胎児脳血流量変化の解明に有用と考えられた。脳血流量の変化をまとめたものを、日本新生児学会(盛岡)、日本産科婦人科学会九州連合地方部会(久留米)、日本産科婦人科ME懇話会(東京)、宮崎脳循環代謝研究会(宮崎)でそれぞれ発表した。
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