ヤギ胎仔の慢性低酸素症(24時間まで)の胎仔臓器血流量の変化は、脳や諸臓器を冷凍ではなく、灌流固定することにより、より安定した結果を得ることが出来るようになった。他に方法論に対する追加実験を行った。 (1)胎仔脳血流の変化を、pretermの胎仔と比較検討した。 低酸素負荷後のヤギ胎仔においてnear term(120日前後)の症例では大脳、小脳、脳幹、中脳部分のいずれも150〜280%の増加を示したが、preterm(90〜100日)の症例では120〜150%の増加にとどまっていた。 (2)硫酸マグネシウム投与後の低酸素負荷による臓器血流量の変化につき、脳各部位、腎および全身臓器につき検討した。 硫酸マグネシウムは、臨床的に子癇前症や切迫早産の治療に頻用されているが、今回、胎児心拍パターンの変化の相違とともに、各臓器血流量の変化を検討した。胎仔の頚静脈より10%MgSO_4を投与し、低酸素負荷を行った。脳血流は通常の低酸素負荷よりも多く増加する傾向があり、特に小脳・延髄では有意に増加していた。一方、腎では通常の低酸素における変化と同様の低下を示していた。全身でみると、脳・心・副腎で増加し、腎・肺・小腸で減少しており、硫酸マグネシウム非投与時と変わらなかった。よって低酸素負荷に反応した全身臓器の血流分布は、原則として硫酸マグネシウム非投与時と変わらなかったが、脳血流を特に増加させる傾向がみられた。 以上の結果は、平成6年度日本産科婦人科学会(東京)、平成6年度日本新生児学会(静岡)、腎と妊娠研究会、日産婦九州連合地方部会で発表した。
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