基礎実験として非放射性マイクロスフェア法を使用して、胎仔各臓器の血流量測定を行った結果、放射性マイクロスフェア法とほぼ同様の測定法を得ることができた。そこで、まず急性期の低酸素血症の脳血流に及ぼす影響を検討した。血流の増加度は大脳に比べ、中脳・脳幹部に大きいことが判明した。次にnear termとpretermとで同様の検討を行い、未熟性の影響を調べた。その結果、海馬の血流増加度が、preterm群ではnear term群より大きいが、それ以外の部位では両群間では差を認めなかった。さらに、臨床的に頻用する硫酸マグネシウム投与下での低酸素負荷に対する影響などを検討した。その結果、脳、心臓、副腎への血流量はマグネシウム投与下でも有意に上昇し、低酸素血症による血流再分配が維持されていることが判明した。この際、低酸素血症に対する心拍数の変化、血圧の変化もマグネシウム投与下では変化を受けた。 以上、低酸素血症状態における胎児臓器血流量の変化は、未熟児(pre-term)でも、またマグネシウム投与下でも基本的には維持され、脳、心臓、副腎への血流が増加することが判明した。
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