研究概要 |
1.癌関連ガラクトース転移酵素のアッセイ系の確立とその成績 ガラクトース転移酵素(GalT)のうち卵巣癌患者の腹水から精製されたGalTには、電気泳動(native-PAGE)上、通常の血清中には見られない移動度の遅いバンドが含まれている。この分画すなわち癌関連ガラクトース転移酵素(galactosyltransferase associated with tumor,GAT)に対するモノクローナル抗体Mab8513とMab8628を用いたdouble-determinant EIAによって健常女性及び卵巣腫瘍患者の血清中のGATを測定したところ、健常女性の血清値のmean+2SDをcut-off値(16U/ml)とすると、卵巣癌の陽性率は52.9%であったのに対し、良性卵巣腫瘍や子宮内膜症では、それぞれ5.7%、6.7%にとどまり、これまでの既存の腫瘍マーカーに比較して偽陽性率は極めて低値であった。 2.GalTの細胞内における局在の検索-免疫組織化学的検索- 次に、Mab8628の結合部位を蛍光抗体法によって検索したところ、卵巣癌細胞の核上部が強陽性となった。Post-embedding及びPre-embedding methodの両法を用いた免疫電顕によってその陽性部位はGolgi層板のtrans領域に相当することが確認された。 3.GalTのGolgi局在メカニズムについての分子生物学的検索 既にクローンニングされているGalTのcDNA(1.2kb)を使い、site-directed mutagenesisの手法を駆使して、変異ベクターを作成、発現蛋白の解析から、GalTのN末端より29番目のCysteineと32番目のHistidineがGalTがGolgiに局在保持されるために重要な役割を演じていることが示唆されるに至った。
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