研究概要 |
エネルギー代謝をMagnetic Resonance Spectroscopy(MRS)により生理学的に解析するには、動物を麻酔下で数時間以上良好な状態に保つ必要がある。VX2ウイルス由来癌細胞の家兎卵巣・後腹膜移植モデルを作成することは困難ではないが、MRSのプローベを卵巣や後腹膜リンパ節腫癌に固定し、良好なMRS波型を得ることは容易ではない。家兎の大腿筋膜直下に移植すると、癌組織は大腿筋肉内に迷入する傾向があり、その場合には、周囲筋肉組織を含めたMRS波型となった。 ヒト卵巣明細胞腺癌のヌードマウス移植系では、皮下に直径2.5cm位の腫瘤ができるが、本腫瘍はslow growingで乏血性であり、直径2cm以上になると壊死を伴ない易いために、クレアチン燐酸やATPのピークを得ることはできなかった。現在、血流豊富なヌードマウス移植癌で検討している。 ヒト卵巣腫瘍の手術材料を摘出後直ちに液体窒素で凍結して、ATPを定量した結果は、良性のムチン性腺腫で、ATP1.38、ADP0.94,AMP0.34μmol/gと高いが、卵巣癌では、ATP0.21,ADP0.47,AMP0.74μmol/gと低値であった。最近、ATPのみならず、クレアチン燐酸、無機燐をHPLCで測定可能になった。そこで、乏血性でSlow growingのヒト卵巣明細胞腺癌とrapid growingのヒト卵巣漿液性腺癌をヌードマウスに移植して、経時的に腫癌を摘出し、高エネルギー代謝物を定量し、その変化を検討する予定である。
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