研究概要 |
ヒトの子宮肉腫や卵巣癌を対象として、癌の増殖能、悪性度・予後を検討した。 子宮肉腫と平滑筋腫について、Proliferating cell nuclear antigen(PCNA)、変異型癌抑制遺伝子産物(P53)を免疫組織染色して、増殖能を評価する一方、Schutteらの方法でFlowcytometryを行った。パラフィン包埋ブロックより40μの切片を作成し、Propium iodide染色し、細胞の相対的DNA量を、488nmのレーザー光で解析した。DNA index,peak ch数及びDiploidy細胞の比率は、子宮肉腫では1.30±0.14、2.31±0.18及び39.21±4.08、中間型では0.71±0.44、1.40±0.24及び60.22±2.46、細胞性平滑筋腫では0.18±0.18、1.33±0.33及び52.47±6.58、平滑筋腫では0.77±0.32、1.60±0.24及び50.18±7.54であった。子宮肉腫は、DNA index,Peak ch数及びDiploidy細胞の比率の全てにおいて、他に比べ有意差を示した。更に、DNA ploidy patternは、PCNAやP53とは関連せず、互いに独立した要因であった。 癌の悪性度は,転移能にも規定されまので、進行卵巣癌の原発巣と腹膜転移巣を採取して細切・可溶化し、uPA,uPAR,PAI-1をEIA法により測定し、又uPA,PAI-1の局在を免疫組織染色により検討した。卵巣癌原発巣では、uPA 46.9±32.5、uPAR 61.9±33.8、PAI-1 21.0±11.2ng/gで、良性と比べてuPA,uPARが高値をしめした。転移巣では、原発巣に比べてuPARが2-3倍の高値を示し、PAI-1は10-20倍と著しい高値をしめした。免疫組織染色では、uPA,PAI-1共に腫瘍細胞の細胞質に強い染色性を認めたが、特に、転移巣の間質細胞でPAI-1が強陽性を示した。uPARは癌細胞の細胞質に発現し、PAI-1は転移巣の間質に多量に存在しており、これらは共に、転移促進的に関与していると思われた。
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