研究課題/領域番号 |
04671027
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
犬山 征夫 北海道大学, 医学部, 教授 (70051480)
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研究分担者 |
佐藤 公輝 北海道大学, 医学部, 助手 (20215841)
間口 四郎 北海道大学, 医学部附属病院, 助手 (20199665)
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キーワード | 頭頚部癌 / 薬剤耐性 / P-glycoprotein / mdr1 mRNA / PEM療法 |
研究概要 |
(基礎的研究)我々はすでに頭頚部悪性腫瘍について3種類の抗体を用いて免疫組織学にp-glycoprotein(P-gp)の発現を検索し、P-gpの発現が認められる症例があることを示した。今回はスロットブロット法、ノーザンブロット法、RT-PCR法、in situ hybridization法(ISH法)を用いてmRNAレベルでの発現を検索した。その結果、スロットブロット法ではadriamycin(ADM)耐性K562細胞(K562/ADM)と副腎の陽性コントロールでのみ発現が認められた。ノーザンブロット法でも同様の結果であるが、K562/ADMが10%以上になって初めてmdr1 mRNAが検出された。しかし、どちらの場合も腫瘍症例での発現は認められなかった。そこでより感度の高いRT-PCR法での検出を試みた。その結果、腺様嚢胞癌症例では腫瘍部においてmdr1 mRNAの発現が認められるが、耳下腺正常部においてより強い発現が認められた。悪性線維組織球症症例では局所化学療法前と後でmdr1 mRNAに大きな変化はみられなかった。次にISH法でmdr1 mRNAの細胞レベルでの局在を調べた。その結果、耳下腺の腺房細胞に一致して発現が認められた。以上の結果を考察すると、スロットブロット法、ノーザンブロット法ではmdr1 mRNAの発現を確認できなかった腫瘍症例においても、RT-PCR法、ISH法ではその発現を確認できた。しかし悪性線維組織球症例の化学療法前、腺様嚢胞癌症例の腫瘍部ではRT-PCR法、ISH法の結果が免疫染色での結果と一致しなかったが、この原因の詳細は不明である。mdr1 mRNA遺伝子に限らず、頭頚部悪性腫瘍症例においてはmRNAの発現をみる場合、腫瘍組織の保存やRNA抽出段階でのRNaseによるRNA分解が大きな問題として存在するが、この点についてはさらに検討を加えたい。また次年度においては頭頚部癌由来のcisplatin(CDDP)耐性株を用いてNa^+、K^+、-ATPaseのCDDP耐性の関与についても検討したい。 (臨床的研究)化学療法においては2つのregimenをとりあげ臨床的に検討した。1つはCDDP+etoposide(ETP)+mitomycin C(MMC)、すなわちPEM療法であり、他の1つはCDDP+5-FUの少量、持続投与である。まだ症例数は少ないが喉頭癌の再発例においてPEM療法を3コース行い、histologic complete responseを認めた。またやはり薬剤耐性を防ぐ一つの方法として放射線治療と化学療法との同時併用療法があげられるが、carboplatinと照射の同時併用により興味ある結果が得られつつある。さらに症例を増やして検討したい。
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