研究概要 |
(基礎的研究)免疫染色でp-glycoprotein(P-gp)の発現が認められた悪性線維性組織球症1例,腺様嚢胞癌2例および正常耳下腺を対象とした。 陽性コントロールとして,K-562細胞のadriamycin耐性株(K562/ADM)および副腎組織を用いた。tatal RNA抽出後,mdrlmRNAの検出を行った。方法はスロットブロット法/ノーザンブロット法,in situ hybridization法を用いた。まとめ:(1)頭頚部腫瘍悪性腫瘍3例についてmdrlmRNAの発現を検討した。(2)スロットブロット法,ノーザンブロット法においてmdrlmRNAの発現が認められなかった症例においても,ISH法はRT-PCR法ではその発現を確認することが可能であった。(3)mdrlmRNAの発現は,その遺伝子産物であるp-gpの免疫染色上での発現結果と一致しない例もあった。なおCDDPの薬剤耐性に関する生化学的な面からの検討も行ったが結論を得るまでには至らなかった。 (臨床的検討)新たに開発したregimenはcisplatin(CDDP),etoposide(VP-16),mitomycin C(MMC)の3剤を組み合わせた方法である。投与方法は第1日目にCDDP60mg/m^2を点滴2時間にて投与し,この1時間後にVP-1640mg/m^2を点滴1時間で,その後MMC 7mg/m^2をゆっくり静注する。第2,3日目はVP-16 40mg/m^2のみを点滴1時間にて投与する。histologic complete responseを来した1例はVMP療法(VCR+MTX+PEP),CDDP+5-FU療法,CDDP+VP-16療法,さらには放射線治療,拡大手術・再建を行っているにもかかわらず,PEM療法にてhistologic CRを認めたことは大変興味深い。またやはり薬剤耐性を防ぐ一つの方法として放射線治療と化学療法との同時併用療法があげられるが,現在,carboplatinと照射の併用療法を未治療例に対して検討している。この第1相試験では安全性の確認と急性粘膜反応を放射線単独と比較したが,問題ないことがわかり,現在第2相試験を行っている。その中間成績では喉頭癌のT2,T3症例で喉頭の温存率が80%であり,encouragingな成績が得られつつある。従って薬剤耐性の克服の面からも今後,検討を進めたいので,平成6年度の科学研究費補助金に一般研究Cとして「臓器・機能の温存と生存率の向上を指向した放射線と化学療法による同時併用療法の研究」を申請中であるので,この中でも継続して検討していく予定である。
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